末路

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ーー両親の借金苦による心中で一命を取り留めた奈緒子と悟は児童保護施設で暮らす事になった。奈緒子は十八歳になると施設を出て、年齢を偽ってホステスとして働きながら大学へ進学。弟との二人暮らしを夢見て勉学に励んでいた。 そんな中、奈緒子の両親の知人でもあった赤坂が奈緒子の働くクラブを訪れ、金の援助を約束する代わりに自身の女になるように奈緒子へ迫った。 その頃には生活の両立が苦しくなっていた奈緒子は、弟の高校進学の費用も考え、赤坂のいいなりになる道を選んでしまった。 赤坂は建築業を柱に、不動産と金融業を営む地元の名士だった。金にモノを言う性格で、女癖と酒癖が悪く、トラブルの絶えない男であった。 赤坂は奈緒子を束縛すべく、通っていた大学へ奈緒子が未成年でホステスのアルバイトをしている事実を告げ、退学処分に追いやると別荘へ住まわせた。 怒りを覚えた奈緒子であったが、援助金によって悟の進学が決まっており、従う他無かった。 それからの8年間、毎日のように赤坂の暴力が奈緒子を襲った。 姉弟は悟の高校進学から次第に距離を置くようになり、大学への進学を理由に悟が地元を離れると疎遠になっていった。 大学四年の夏に、悟は意を決して奈緒子へ会う為に地元を訪れた。弟からの久々の連絡に喜んだ奈緒子であったが、今の自分を見られる事をどこかで恐れていた。 赤坂の暴力に耐え忍んでいた奈緒子だったが、精神的にも肉体的にも限界だった。 強引に会う約束を取り付けた悟は、数年ぶりに再会した姉の腕に浮かぶ青痣や、自ら切った二の腕の躊躇い傷を見つけ、事態を知った。 そして事件は起きてしまった。
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