末路

3/12
前へ
/12ページ
次へ
ーー須藤智也の母親は元々風俗嬢で父親も客の誰かだった。妊娠を理由に上がり、程なくして出産。智也が小学二年生までは母と共に祖母の家で暮らした。 スーパーのレジ打ちで働き始めた智也の母であったが風俗時代と比べると収入は大幅に減っていた。智也の為に預けていた金が、次第に贅沢の引き出し金となっていった。 身を立てられていない事を知り、祖母は小学四年生の智也を引き取った。 母親は週一で智也に会いに来ていたが、年が重なるに連れ、顔を出さなくなった。 智也が高校に進学する頃には、男を作り、新しい家庭を作っていた。 高校卒業間近に祖母が他界。智也は一人で生きる決意をした。 助成金で大学進学。一人暮らしを始めた。そんな折、悟と出会った。 境遇の似た二人はすぐに打ち解け、友情を育んだ。 智也は悟を尊敬視していた。 周囲の学生らがサークル活動や夜のバーやナイトクラブで騒ぐ傍らで、悟は勉学に励んでいたからだ。 恵まれた環境にない者だからこそ、自分の基盤を作ろうともがいていた。その姿勢に憧れと自身との比較差を感じていた。 智也は自分を捨てた母親を恨む一方で立派な仕事を選ぶ事で必要とされるのではないか、とどこかで母が会いに来てくれる事を思ってもいた。だがそんな考えを抱く事に自己嫌悪し、世の中を悲観的に捉えていた。 智也は心のどこかに常に「死」を置いていた。ふつふつと煮える死の釜を、日々掻き混ぜながら生きていた。 悟にもその概念はあった。 しかし希望を抱きながら生きる事を悟は諦めていなかった。 「故郷に置いて来た姉のおかげで今の自分がいる」 と、悟は常々智也に口にしていた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加