末路

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「もう一度だけ言うぞ。もう逃げ場はない。ここの部屋もホテルの周囲も取り囲んだ。お前らに与えた残りの時間でよく考えろ」 飯尾は扉越しに諭すように言った。 松岡は捜査本部と連絡を取っていた。肩に下げたショルダーフォンの受話器を直すと額の汗を拭って言った。 「飯尾さん、今し方本部からお礼を送ったそうです。うちらで確保しましょう」 飯尾と松岡は、目撃情報を頼りに智也と奈緒子の潜伏場所を見つけ、数週間に及び張り込みを続けた。奈緒子が生理用品を買う為に外へ出入りする姿を確認し、本人である事を裏付けた飯尾と松岡はホテルへ駆け込み、フロントに状況説明をしてマスターキーを借りていた。 「少し待て。中の二人が自分らで部屋を出るのを待とう」 「何故ですか? さっさと踏み込みましょうよ」 「考える時間を与えるんだ。取調で自供させる為にもな」 二人の刑事は踏み込む準備を整えていた。
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