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6 僕
三階の一番奥の部屋を前にして、僕達は深いため息を漏らした。
最初は運よく避けれていたが二階の廊下にはいたるところにトラップがあった。頭上から落ちてくる宝石に、やたら滑る床。
三階に向かう螺旋階段でも多くの障害に阻まれた。ラジカセから突然流れる爆音に、頭上から降ってきた重量感のある剣。
三階についても安心はできなかった。廊下には本気で人を傷つけてきているようなトラップが張り巡らされていたし、物置部屋を開けると雪崩のように物が飛び出してきた。
「これが最後の部屋だね」
と僕は後ろを振り返って言った。武井が額に滲む汗をシャツで拭いながら笑った。
「この部屋に前のやつらがここまでしてでも隠したかった秘密がある」
「早く開けてよね」と姫野が僕の背中を叩いた。「秘密を暴いてやりましょうよ」
僕は頷いた。扉の方を振り返り、ドアノブを握る。シャツの裾で手は被せてある。
僕はゆっくりとドアノブを捻った。
その時、背後で声がした。振り返らなくても声の主はわかった。僕と武井の秘密話を盗み聞きした和田先生だ。
「開けてはダメよ! その部屋は私達が昔作った秘密基地なの! 手榴弾が爆発するわ!」
手榴弾? 馬鹿らしい話に僕は少し笑いが漏れた。そこまでしてこの部屋の秘密を守りたいのか。和田先生は子供の頃にこの部屋に何を隠したんだ。
背中を押された。姫野と武井の二人の手で。
ドアノブを回す必要はなかった。もう回し終わってる。
僕は中学生最後の夏、秘密基地の扉を開けた。
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