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いちのじゅう 実はパクリ絵師の康太
「音、聞こえてたんでしょ?」
きららが、俺の目の前まで来て、そのえっぐい武器腕を突き出して言った。
それを近づけられると、頭の芯がコテでも当てられたようにひりひりした。
「痛たた」
すると、きららは武器腕を胸に抱えて、
「ごめん。まだ慣れなかったね。二等兵殿には」
と言った。
「それさ、何?」
「これは”%&(#)WT(#$#')%=”だけど」
それがなにか?って顔されても。
「も一度、どぞ」
「あ、ごめん。わからんか二等兵殿には」
なんか気になるな。さっきからの二等兵呼ばわり。
「武器」
いや、見りゃー分かるけど。そういうことでなくて。
「なんで、きららの腕はそんなんなってるの」
「えっと、説明しようにも、言葉が・・・・・・」
と言ったところで、きららが、
「また、もう」
と苛立たし気に言った。
見ると、きららのえっぐい武器腕が消えて、再びあの黒い腕になっていた。
で、すぐもとのしなやかな腕に戻る。
やっぱりそうなんじゃんか。
「ね、康太くんのせいなんだ、これ」
どういうことでしょう。
「2限の戦闘で、・・・・聞こえたでしょ、音」
そこにつながるのか。でも、
「2限の戦闘?」
学園のカリキュラムに「戦闘」なんて授業はなかったかと。
「うん、奴らとの闘いでね、何度も音がしたと思うんだけど、ちがう?」
きららは俺の理解はおかまいなしで話を進めている。
「あれ、あたしが武器を取りに行った音なの」
「どこに?」
「5次元に」
「そっか。5次元か。それは大変でした。って、どうやって?」
「今見せたでしょ」
「ぼわってやつ?」
「そうそれだよ。やっぱりショウくん聞こえたんだね」
というと、〆子のほうに振り返った。
「おせーんだよ。カスが」
〆子の罵詈雑言が嬉しそうだった。
ギッゴーン、ガーンコーン、キンゴーン。
3限の予鈴が鳴った。相変わらずノイズがひどい。
「あれ、授業始まっちゃう。じゃあ、つづきはお昼休みに」
と言って、きららは話を切り上げ〆子の所まで戻って手を取った。
「行こ、ゆいちゃん」
「あの」
俺、絶賛わけわかめ中なんだけど。
〆子ときららは、すでに部室のドアを出ている。
最後の人が鍵、あった。机の上。
俺は鍵を閉めながら、二人に向かって叫ぶ、
「ちょっと、待ってよ!」
全然止まってくれねーし。
部室棟の廊下を駆けながら、いつものようでない二人の後姿を見ている。
なぜか、ちょっと弾んでるような。スキップでもしてる?
3階への階段のところで、二人は待っていた。
いよいよ、対決か。でも、戦い方とか知らないよ、俺。
それに康太は親友だ。そんなやつと戦うことになるなんて思ってもいなかった。
でも、〆子のため、なによりきららのために戦うしかないなら、
俺の心は決まっている。
康太よ。俺のアオハルの踏み台となれ。
「どうする?」
俺はきららに作戦を尋ねた。・・・・つもりだった。
「じゃあ、お昼休みに向かえに行くね」
ときららは言うと、〆子を俺に託して階段を上って行ってしまった。
おいおいおいおい。もひとつ、おい。
踊り場を駆けてゆくきららに向かって、
「え、敵なんでしょ。康太って。目の前に敵がいるんだけど、どうすれば」
「大丈夫だよ、多分、多分、多分」
階段にきららの声が反響する。すでに、きららの姿は見えていない。
唖然とする俺。〆子が俺の手を引いて歩き出す。
「言うて、3軍だし」
と〆子の心の声。
「なら、安心」
ってなるか!
教室に戻って席に座ると、康太がすぐに振り向いて喰い気味に聞いてきた。
「で、どうだった。どこで買ったって?」
聞くの忘れてた。って、どこにも売ってなさげだけど。どう言おう。
きらら、5次元って言ってたな。そうだ。
「シオンモールの5番街だって」
「シオンモールの5番街? ガジェット屋なんかあったか、シオンモールに」
「いや、コアマニアしか知らん所だろ、お前が知らんなら」
「そっか。じゃあ、これもそこで買ったんだろね」
と言うと、自分の席から紙を取って、俺の机の上に広げた。
「今の休み時間に描いたんだ」
そこには、めちゃくそえぐい武器腕が描かれていた。
そしてそれは、きららが部室で出して見せた武器腕とまったく同じデザインだった。
康太、お前って本当は・・・。
パクリ絵師だったのか。
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ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
康太災難ロード驀進中
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10月10日(土)AM8時
です。
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takerunjp
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