さんのいち 母がくれたもの

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さんのいち 母がくれたもの

「海藻サラダが残ってるぞ。条時ショウ」 毎朝、毎朝、母さんが言う。 なぜなら毎朝、毎朝、海藻サラダが食卓に載るからだ。 しかも、サラダボール山盛りの。 それを全部食べろと言っているのだ。 で、俺はしっかり食べる。 決して、写真の父さんのように後退した前髪が怖くてではない。 今の俺はそれが大いに役に立つと知っているからだ。 俺は一気に海藻サラダがを頬張った。 「るるちゃんとはうまくいってるの?」 るる?  青葉るる、いつもフリ〇ンイッヌ男を連れている調教女子。 しかもハメ技を得意とするボーダーの一軍。 その青葉るるがどうかしたのか? いや、なんで母さんが青葉るるを知っている? 「母さん何でるるのこと知ってるの?」 おそるおそる聞いてみる。 何かが起こっていると思ったからだ。  俺は閏6月を戦い抜いて再び7月6日に辿り着き、〆子ときららと一緒に魔の小野先生の授業を受けた。 今度こそはあの古典の授業を切り抜け、明日の7月7日、きららの18才の誕生日を迎えるつもりだった。 だが、そこで「がしゃどくろ」に襲われた。 アルファベット戦の後、くるみを助け、星形みいを救い出したが、転回など起きてなかったのだ。 依然としてボーダー優位の状況の中、俺たちはG空間にぶっ飛ばされてしまったのだった。 で、今日は何日だ? 何日巻き戻されたんだ? 「母さん、今日は何日?」 「おや、変なことを聞く子だね。今日は昨日の次の日にきまってるじゃない」 やばい、母さんに未来から飛んで来たことがばれたら、 「ちょっと私のラボでハツカネズミさんと一緒に生活してみようか?」 って研究所に強制連行されるに決まってる。 「いや、ちょっとカレンダーが、ごにょごにょ」 「ごにょごにょだと?」 最悪の状況だ。 母さんは実験室では冷酷無比。 実験対象に対して感情をまったく差しはさまない氷の女と聞く。 それは息子の俺に対しても変わらない。 ここは逃げる。 「行ってきます」 玄関に向かう。 今日がいつかは〆子に聞こう。きっとあいつもこっちに飛ばされてきてるはず。 「ちょっと待ちなさい。これ持って行きなさい」 母さんが何か小物を差し出した。 「スタウロライトの指輪。るるちゃんにあげたいって言ってたでしょ?」 それは、きららの誕生日のために作ってもらったやつなんじゃ? 「きららのは?」 「きららってどなた?」 母さんの顔はきららなんて人、とんと知りませんと言っていた。 やはり何かが起こっている。 康太作のがしゃどくろの威力が凄まじすぎて、G空間が歪みでもしたのじゃないか? しかし、今さら何を言っても仕方がない。 また、〆子ときららと協力すれば7月6日に返ってこれる。 くるみと星形みいの件で、俺たちの絆は一層固くなったハズ。 「ありがとう、きっとるるに渡すよ」 母さんの疑うような表情は相変わらずだったが、とりあえずここはしのげそうだった。 「じゃ」 と玄関を出ようとすると、 「あ、忘れてるよ。タロットカード」 母さんのいつものやつ。 「愚者でした」 大アルカナの0番。ピエロが口笛吹きながら、崖っぷちをイッヌ連れて歩いてる危なっかしい絵柄。 意味は、冒険の始まり。 --------------------------------------------------------------------------- ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。 しばらくの御無沙汰でしたが、連載を再開したいとおもいます。 内容は一旦取り下げた3章を改稿して、青葉るるの異世界転生譚を抜き出してお送りします。 読まれて、おや既視感がって方は、おそらくマトリックスのせいです。 次回の更新は来週中に1話分です。 しばらくはゆっくり更新で行かせていただきたいと思います。 スター、本棚登録、スタンプ、コメント等足跡を残していただきますと、日々の励みになります。 今後も『すたうろらいと・でぃすくーる』をどうかよろしくおねがいします。 takerunjp 改め 真毒丸タケル
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