さんのさん 俺は、もっとるるに叱られたい。

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さんのさん 俺は、もっとるるに叱られたい。

「「「えっと、お目覚め?あ、よかった。たまに目覚めない人いるから」」から」 起き上がって周りを見るとそこは暗黒の雲が垂れこめる陰気な空間だった。 目の前にいる、さっきしゃべったのは見上げるほど巨大な黒い犬、と言っていいのか?  3つ首の怪物だった。 「「「ケルベロスと言います」」ます」 「あ、知ってる。地獄の番犬」 「「「そうです。ここで地獄行きかそうでない人かを見分けてます」」ます」 「それWikiに載ってたやつ」 「「「最近ここに来られる皆さん勉強されてて、いちいち最初から説明しなくてよくなって楽になりました。ありがたいことです」」です」 と言ってケルベロスはお座りをした。 話すタイミングが遅い奴がいるのが正直うざい。 「「「さて、あなたですが」」すが」 と真ん中の奴が残念そうな顔をする。 「「「来るべきでないのに来た人なので引き裂いて食べてしまわないといけないのです」」です」 俺はそれを聞いて逃げ場を探した。 しかし前も後ろも断崖の上の細い道になっていて、逃げようがなかった。 俺の悲壮な顔を見たからか、ケルベロスは取りなすように、 「「「あ、安心してください。最近は別ルートが開拓されまして、ゲームの世界みたいなところに生まれ変わることが出来るようになりました」」した」 と説明した。 「あ、それも知ってる、異世界転生でしょ」 「「「助かります。では心の準備はいいですか?」」すか?」 6つの目玉がぐるぐると回り出す。 「できればカワイイ女の子がいいんだけど」 俺はもし転生するのなら、王道の美少女冒険者になりたいと思っていた。 スタイル抜群でおっぱいが大きければなおよい。 ゴブリンとかスライムとかの人外はなし、かすスキルの陰キャは論外。 「「「希望は聞き入れられました。それでは異世界生活楽しんでください」」さい」 耳をつんざく地獄の咆哮。 俺は一瞬で猛烈な竜巻のなかに放り込まれた。 ぐるぐるぐるぐる。 俺の意識は再び暗闇の中へ。 「でさー、何て言ったっけあいつ。そうそう佐々木海斗。慈恩の子分のくせにあたしに告ってきやがってさ」 「それでどうしたの?」 「面白そうだから、本気のふりしてOK出した」 「悪女だー」 「でも、さっき別れた。やっぱあたしはイッヌと遊んでた方がいいもん」 「るるのイッヌ遊び。うける」 女子たちの楽しそうな話し声がする。 ここは?  クンクン。 珈琲の香りする。きっとコーヒーショップだ。 そして皮靴の匂い? 目を開けると、鼻先に学園指定のローファーがあった。 ネームがある。 「Ruru Aoba」 るるの靴? ということは会話しているのはるる。そういえば佐々木海斗のことを俺は知っているぞ。 待て待て、俺は異世界に転生したんじゃないのか? ハッ! そりゃそうだ。ないよね。現実に異世界転生なんてこと。 あのミツ首ワンコは夢だったんだ。 異世界に転生とかって、うける! 俺は頭をあげて周囲を見ようとした。 すると、るるの声で、 「ダメよ!ジョウっち。じっとしてなさい」 と厳しく叱りつけられた。 「きゅうん」 ジョウっちだと。 るるは俺の事そんな風に呼んでなかったぞ。 いやいや俺をそんな風に呼んだ奴なんて未だかつていなかった。 どういうことだ。 まて、いま「きゅうん」と言ったのは誰だ? 俺はるるにそれを聞こうとした。 「きゅうん(どういうことだ)?」 声が出ない。 「きゅ、きゅうん(おい、るる)」 「ジョウっち。周りの人の迷惑だからうるさくしないの」 そう言われて周囲を見渡すと、そこは落ち着いた感じのインテリアに重厚感のある椅子とテーブル。 見るからにハイスペックな人間が談笑する空間だった。 ここは駅前のスタバだ。 陰キャでカースト3軍の俺のような人間は学校帰りに絶対立ち寄ってはいけない、リア充御用達のコーヒーショップ。 え? どういうこと。 「そろそろお店変えない?」 るるが言った。 「ジョウっち、いくよ」 と言って、青葉るるが立ち上がって出口に向かうと、俺の首が勢いよく引っ張られた。 いたたた。 何これ? なんで俺、首輪してる? 「ジョウっち、怒られたいの?」 「きゅうん(わかったから)きゅうん(引っ張らないで)」 俺は首が痛むのをがまんして、るるについて店の外へ。 なんか涼しい。 るるは半袖。今は夏だったはず。 でも、クーラーに当たりすぎたのではなさそうだ。 寒いというのでなく、すーすーするから。 特に下半身あたり。 俺はウインドーに映る自分の姿を見てみた。 まっぱだった。 通行人が行き来する往来に、俺はまっ裸で立っていたのだった。 「こら!」 「きゅうん(ごめんなさい)きゅうん(服を着忘れました)」 流石にこれはまずい。 股間を隠しながら、るるに謝った。 「ジョウっちはイッヌなんだから、立っちゃだめでしょ!」 違った。怒られたのは立ったことだった。 俺は大急ぎで四つん這いになって青葉るるの足下に伺候して、 「おすわり」 した。 どういうこと? 異世界に転生させたケルベロスが犬だから、俺は犬になっちゃったの? 「希望は聞き入れられた」ってのは(飼い主が)カワイイ子ってこと? どうしてるるはまっ裸の俺を連れてるの? なんでその俺はイッヌなの? やっぱりこの世界はどこかおかしい。 信じたくはないが、俺の異世界は達成されたようだった。 --------------------------------------------------------------------------- ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。 まあ、お定まりの異世界転生です。 あろうことか青葉るるのフリ〇ン犬に転生した? 条時ショウ。 なんて恥ずかしい格好で、スタバにいたんでしょう。 でも、なんだかまんざらでもなさそうな感じ。 それでいいのか!? お前にプライドはないのか? それでいいみたいっす。 次回の更新も来週中に1話分です。 スター、本棚登録、スタンプ、コメント等足跡を残していただきますと、日々の励みになります。 今後も『すたうろらいと・でぃすくーる』をどうかよろしくおねがいします。 takerunjp 改め 真毒丸タケル
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