チワワと一六タルト

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 彼と私は夕食を食べに出かけました。 そして、家に帰り、その残骸を発見しました。 そう、食いちぎられた、パッケージの残骸を。  ダイニングテーブルは四人用で、椅子はよくある背もたれのついたものが二脚とベンチタイプの椅子のセットでした。  彼から言われていました。 ダイニングのベンチ椅子は机の下にしまっておくようにと。 しかし私はそれを怠っていました。いや、正確には、しまいきれていませんでした。  彼女は小さな体でその偉業を成し遂げました。食いしん坊は、わずかに数センチはみ出た椅子を踏み台にし、机の上にある目標物をゲットしたのです。  残骸からは一六タルトが消えていました。そう、丸々一本、消えていました。 私が端を一切れ食べていなければ、封がされたままで匂いが漏れることもなく、被害もなかったことでしょう。 しかし、封は開いていました。  犯人は彼女、そう、チワワでした。  彼と私が見たチワワは、もはや、チワワではありませんでした。 彼女はよたよたと歩いていました。 お腹に一六タルトが一本入っているのです。見た目にもはっきりわかるほど、上から見た彼女はパンパンでした。  チワワは、デカワになりました。
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