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今さらではあるけど、もしも咲に彼氏がいるなら、俺と祭りに出かけて、誰か咲の知り合いに見られたらエライことになる。
「なあ、咲。お前、彼氏いるのか?」
訊きづらいはずのことなのに、俺はついそんな質問を口にしていた。
「いないよ。こんな男っぽい女子を好きになる男子なんていないだろ」
咲は苦笑いして、自嘲するように言った。
首を横に振ったのに合わせて、栗色のショートヘアがふわりと揺れる。
「今日みたいなカッコしてたら、引く手数多だろ?」
「バカか拓は? 毎日浴衣を着とけってか?」
「そういう意味じゃねぇよ。そういう女の子っぽいカッコって意味だよ」
「わかってるよバカ。拓こそ彼女いるのか?」
横にチラッと視線を向けると、そう言う咲の首筋は、なぜか真っ赤に染まっている。
どう答えようかと迷ったが、この質問を先に投げたのは俺だ。
素直に本当のことを答えるべきだと考えた。
「いねぇよ。だけど最近、大学の同級生の子に、付き合って欲しいって告られた」
こんな話を聞いて、咲がどんな顔をするのか。俺は気になって彼女の顔を覗き込んだ。
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