仕返しをしに来た

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 大学2年の夏休みを目前に控えた頃のことだ。  俺は大学の同級生の女子に「付き合ってほしい」と告白された。 「今は……付き合えない」  その子はまあまあ可愛いし、性格も悪くない。  普通に考えれば、付き合いたいレベルの子ではある。  だけど俺は、そう断った。 「好きな人がいるの?」 「いや……そういうわけじゃないけど……」  ホントは、そういうわけなのか、そうじゃないのか、自分でもよくわからない。  俺は高校時代に好きだった子が未だに気になって、他の人と付き合うなんて決断ができないのだ。  その人を今でも『好きな人』と呼べるのかと言えば、そこは迷うところなのだが。 「わかった……」  彼女は悲しそうな顔でそう言った。 「ごめんな。」 「ううん。でも私、(たく)君が振り向いてくれるのを待つね」 「あ……ああ」  なんていい子なんだ。  こんなありがたいことを言ってくれるのに、曖昧な返事しか返せない俺は酷いヤツだと思う。  しかし──
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