同級生

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 寒い寒い雪国で生まれ育った俺は、都会に憧れて地元でやんちゃを繰り返していた。  そのお陰で逮捕歴もあるが、都会への憧れは捨てて今はすっかり更生し、真面目に会社員をやっている。 「うわ、やべっ。あと五分しかねえやっ」  昨日、連れと遅くまで飲んでしまい、田舎特有の一時間に一本しかない電車に乗るべく、猛ダッシュ中。  腕時計を見ると、電車の到着時刻まであと五分しかない。  一生懸命駅まで走るが、寒くてアイスバーンになった歩道は上手く走れずに滑る。ああ、電車に乗り遅れたら完全に遅刻どころの騒ぎじゃねえや。またネチこい上司にどやされる。あああ、どうしよう・・・・。  必死の形相で走っていると、すっと俺の横を俺と同じスピードで車が走っている事に気が付いた。視線を向けると窓が開き、中から声を掛けられた。「三神、久しぶり!」  声をかけた運転席の男をよく見ると、小・中学生の時の同級生だった。ヤツは、俺がやんちゃしていた頃によく虐めていたショボ松だ。名前は唐松元(からまつげん)という勇ましい名前だが、何の元気もない貧相な男だったので、ショボ松というあだ名を付けて虐めていた。  見るとどうやら高級車に乗っているようだが、もともとは貧乏人なのに、何かで成功したのだろうか。 「おう」  ちょっとバツが悪い。昔のことは本当に反省しているが、面と向かって謝ったりできない。無駄に高いプライドのせいだ。
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