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目録ノ壱 泪鹿の子、蓑亀に七福神の宝物①
またまた『選考結果のお知らせ』なるお祈りメールがやってきた。
カフェスタンドでたっぷり三〇分ほど放心したのち、成海は予定通りなんとか二社分の応募書類を整え、郵便局で出した。既に時刻は一四時を回っている。
中天を過ぎたとはいえ夏の日差しは相も変わらず猛烈で、とぼとぼと通りを歩いているだけで、汗が滴り落ちてくる。長居した埋め合わせにカフェスタンドでテイクアウトしたアイスコーヒーの氷も、見事に溶けてしまっていた。
(お腹、全然空いてこないのウケる……大学四年のときは、こんなのしょっちゅうだったのに)
本当なら、午前中に書類の投函を済ます予定だった。その後はいつもの立ち食いうどん屋で軽く昼を済ませ、別のカフェに入って資格勉強するつもりだったのだ。成海が持っている資格といえば高校のときに授業の一環で取得した漢字検定二級くらいで、履歴書の特技・資格欄がさみしいことになっていた。
前職で貿易実務に携わり多少英語の読み書きができるようになったので、もう少し磨いて英検かTOEICの良スコアでもとれば少しは箔もつくだろうと考えた。勉強自体は苦でないし、今日もノルマをこなす気でいたが……昼間着信したメールにすべて持って行かれてしまった。
猪瀬成海、二五歳。
現在絶賛転職活動中だが、まったく芽が出ないままひと月が経過した。
はあ、とため息を吐きそうになって、ぐっと呑みこむ。
とりあえず水分を補給しようと、足を早めた。
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