目録ノ壱 泪鹿の子、蓑亀に七福神の宝物①

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(そんな弱音吐いたって、現実は一ミリも変わらない。進め。前に進め……! それができないあたしはいらない!)  ふー……と、深く息を吐いてから、テイクアウトしたアイスコーヒーを一気に飲み干した。とっくの昔に常温に戻っていたそれは口の中で少し粘ついたが、頓着せずに成海は立ち上がり、ゴミ箱に空のカップを捨てる。  そのまま早足に緑道公園を抜けると、隅田川に続く新大橋通りを渡り、糊ノ木町へと戻っていく。居候している祖母宅――和菓子の晴海屋への道を順当に辿っている、つもりだったが……ふとその歩調に迷いが出た。 (でも、戻るにはちょっと早い時間なんだよなぁ。どうしよ……店手伝うって言ってもばあちゃん嫌がるし。家事すらさせてくんないし。うーん……今日はもう作業できる気がしないし……隅田川の河川敷でも、ぶらぶらするかなぁ)  そう思い直し、一度新大橋通りへと戻ろうとして、ハタと立ち止まる。 「……ここ、どこ?」
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