漆黒の球体

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漆黒の球体

 テディは準備室に入って研究室からくる父を待つことにした。誰も迎えに来ないのも警備上の理由であると思った。  * * *  テディは準備室のドアを開けた。時間は午後8時30分、誰もいないその部屋は真っ暗だったので手探りで電灯のスイッチを探した。 「あった、これだ」  テディはゆっくりとオンのスイッチを押すと、天井の蛍光灯がパチパチとフラッシュして室内が見えてくる。生活感がまるで感じられない準備室という名の小さな事務室。窓も無く四面に何の飾りもない殺風景な壁、中央には平机とそれを囲む椅子が四脚ある。  テディはテーブルの上にポツンと置かれている物体に目が止まった。というよりもこの空間で目に止まるといえばこれしかない。 「何だ……、これは」  真っ黒いスイカ大の球体だ。よく見れば底面には四つのこぶ程度の脚があり、転がらないようになっていて、ほぼ中央に横一線のラインが見える。これが工作物であるのは認識できるが材質は金属かプラスチックか、外見では綺麗に研磨されていて触ってみないとわからないが、テディの記憶には全くない、初めて見るものであることは確かだ。  テディは触ってみようと手を伸ばした瞬間、    ピーーーーッ 黒スイカからか細い電子音が聞こえてきた。テディは伸ばした手を思わず引っ込めてテーブルの裏側に回りってみると背筋が一瞬にして凍りついた。 「おいおい、ちょっと待ってくれよ!」 物体の反対側の下方に小さなタイマーがついている、音はここから発せられたのは間違いないようだ。中央に液晶画面で       5:00 と表示しているデジタルがカウントダウンしている。その上には豆粒大の赤と緑のボタン、赤は消えていて緑は点滅している――。 abbf400e-92de-43e5-97a1-935406efe840
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