カウント・ゼロ

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 聞きなれた声が自分の肩を叩く。ここは地獄か天国か?テディは恐る恐る目を開けて頭にかぶった上着を取った。 「父さん」 「悪かったな、研究が少し延長しちまってな」 「ふぅ……」   どうやらここは現実の世界のようだ。目の前に立っているのは白衣を着た父だ。上の階にある研究室から下りて来たようだ。 「どうだ、私の試作品は」 「試作品?」  この部屋にある試作品、つまり工作物といえば平机の上にある黒いコレしか思い当たらない。 「赤いボタンを押したまえ」  父は得意満面で息子に黒スイカのボタンを押すことを促している。テディは一度父の顔を見た、ゆっくりと頷いている。 「は……、はい」 「なーに、緊張せんでエエ」  テディは唾を呑んでおそるおそる言われた通りにチカチカと素速く点滅している赤いボタンを押した。すると中央の継ぎ目がゆっくり開くと中から白い湯気が昇り立ち込め、先程の甘い匂いが一気に膨れ上がりテディを包み込んだ。 「……これは?」  湯気が消え去った後の黒スイカの中を見ると、真っ白に輝いてひしめき合っている無数の小さな粒の集合がテディの目に飛び込んできた――。  
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