波打際の彼女

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 ガキ大将気質で、食い意地の張ったクサフグは論外だ。かといって岩の陰をちょろちょろしている、名前も知らない地味な色のやつでもないだろう。あの自意識過剰っぽい、派手な虹色のニシキベラも違う気がする。それならやっぱりゴンズイだろうか。あの縞模様のドジョウみたいな、触れば毒針で刺してくるやつ──‬。   というようなことをダチに話したら、「そもそもなんで、魚でたとえようなんて思ったんだよ?」と呆れられてしまった。 「お前は海のことばっか考えてないで、もう少し語彙力身に付けたほうがいいぞ」  あいつの言いたいことは、実は今でもよくわかっていない。ゴイリョクっていったいなんだ? 戦闘力の仲間か?  こんな俺だから、あの女と話なんて合うわけがない。所詮は住む世界が違うんだ。この先もう、言葉を交わすこともないだろう。  ‪──‬そう思っていた。  あの雨の日の午後までは。
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