暗号、ですか?

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暗号、ですか?

「焦るな。目の前を冷静に見られなければ、大事なことを見落とす」  冷たい言い方をする北柴。ちらりと北柴の横顔を見ると、先ほどと変わらず冷静そのものだ。この人に感情というものがないのか、実咲は時折気になっている。 「簡単に和訳をすると、  風の当たらなところでエックに伝えて、マイク、エックに。マイクを使って伝えて。若くて、26個の小さな谷で SR23  どういう意味だ」 「エックって誰ですかね? マイクは人なのか、モノなのか」  和訳をしたところで正確な意味を得られそうにない。 「エック……ドイツのカトリック教徒で神学者だった、か。宗教が関わってきているのか」 「よく知っていますね。神学者の名前とか」  北柴の知識の豊富さに舌を巻く実咲。北柴は頭を掻きながら謎の英文を見ている。 「英文ではない可能性が高いな。そうすると」 「暗号」 「そうだな」  もう一度実咲たちは英文らしき文を見る。 「だとすると、解読に時間がかかるな」 「推理小説みたいに、簡単に解けないもんですかね」  唸りながら実咲っは暗号文をじっくり見ている。 「暗号の解読には豊富な知識量と解読法を知らないと簡単には解けない。南雲、お前はそれがあるのか?」  実咲は黙って首を横に振る。推理小説は好きで読むが、名探偵の推理に感心してばかりで、自分の頭で考えることはない。 「ちなみに、俺も解読は得意ではない」  北柴も困ったように言うが、パソコンから目を離さないでいる様子からすると、もしかしたら頭の中で考えているのかもしれない。しかし実咲には既にお手上げ状態だ。 「だったら、これは無理ゲーじゃないですか」  肩を落としながら、実咲はため息も吐く。それでも目線はパソコン画面から離れない。 「見たことがある文字のような、そうじゃないような」 「見たことがあるのか?」  北柴の問いに実咲は思い出そうと、腕を組みながら考える。しかし何も思いつかなく、首を横に振る。北柴もあまり期待していないのか、実咲を問い詰めることはしない。 「あるような、ないような。……わかりません」 「思い出したら言え」 「了解です」  実咲の回答に北柴は特に落ち込むこともなく、自分のパソコンを立ち上げる。 「解読で、アナログだが、簡単に作られそうなのはシーザー暗号だな」 「シーザー暗号?」  聞いたことがない言葉に実咲は首をかしげる。
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