何が、目的?

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何が、目的?

「シーザー暗号は暗号論理上、最も知られて、シンプルな暗号の一つだ。単一換字式暗号の一種で、平文の各文字を、辞書順に三文字分シフトして暗号文を作る暗号。単一換字式っていうのは、特定の文字を、特定の数だけ、辞書の順番で前後にずらすというルールがある」  スラスラと説明をする北柴はパソコンから目を外さずに、アルファベットの表を作っていく。北柴が何を作っているかわからずに、北柴の作業を実咲は見ている。 「読み解く鍵としては、いくつ文字をずらすかの数字が必要だけど、カギとなる数字が何かがわからない」  表と英文をエクセルに書き込み、腕を組んで思案する北柴。 「数字って、ここに書かれている26とか23ではないんですか?」 「アルファベットは二十六文字。26では一周回ってしまう。アルファベットのシーザー暗号を作る場合26以上の数字は使われないのが特徴だ。そうすると、23なのか」  カタカタと変換表を作っていく。変換表を作るとすぐに、今回の書き込みの文を変換していく。 『xipp igo paa tel qmoi igo hipp ep cerk26 wv23』 「もっと意味が分からなくなりましたね」 「ずらす数が違うのか、それともシーザー暗号ではないのか」  二人は眉間にしわを寄せながら、変換結果を見る。変換結果から何かを思い起こさせるようなものはない。 「他に暗号解読で思い当たりそうなのはないんですか?」 「俺は暗号解読のスペシャリストじゃない。期待されても困る。でも解読しないと始まらないから考えているだけだ」 「それはそうですけど……」  もごもごと口ごもる実咲。北柴は頭を掻きながら実咲に提案をする。 「違う視点から考えるか。何故、SNSに書き込みをしたのか」 「書き込んだ人が自己顕示欲の塊で犯行を広く知られたいから、とか?」 「他に、考えられることは?」  間を開けることもなく、北柴は実咲に質問投げかける。実咲は思いついたことから言葉にしていく。 「えっと、愉快犯。いたずら目的」 「いたずら目的でこんな手の込んだことをするか?」  すぐに北柴に却下をされるが、実咲はめげずに考える。 「他には……誰かに気づいてほしいから」 「何を?」 「誰かに助けを求めてる?」 「それだったら、なんで暗号なんだ? 俺たちに素直に助けを求めれば良いだろう」
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