ぼんやりしたものしか、入らない?

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ぼんやりしたものしか、入らない?

「書き込んだ相手を探し出せないですかね?」  腕を組みながら考えていた実咲は北柴に提案をする。 「どこかのサーバーを経由していたら、開示まで時間がかかるな」  二人はどのようにして書き込んだ人物を探すか考えていると、東海林と西垣が実咲たちのデスクに近づいてきた。 「何かわかったか?」  東海林が実咲たちに声を掛けた。 「途中までは解読できたんですけど、肝心なところまでは、まだ……」 「そうか。こっちの三件は警視庁と連携をとることが出来た。今解析してもらっている。今手が空いたから手伝うぞ」  西垣はそのまま警視庁のサイバー班とやり取りをするらしく、東海林だけが例の暗号文の前に席を持って移動してきた。 「それで、進捗は?」  東海林は北柴と実咲に再度進捗状況を確認した。北柴はこれまでの解読状況とその結果、不明点を東海林に伝える。 「SR23というのは何だ? 場所か、時間か?」 「そこまではまだ」  首を横に振って北柴は答える。 「このSRってどこかで見たことがあるような気がするんですよね」 「どこだ?」  実咲の何気ない呟きに東海林と北柴が反応をする。 「いや、こうぼやーっとしたものが頭の中にあるだけで、はっきりとは」 「お前の記憶はぼんやりしたものしか入らないのか」  ため息交じりに北柴は言う。むっとした表情で実咲は北柴を見るが、北柴はそっぽを向く。そんな二人の様子を見て、東海林はあきれた顔をする。 「お前ら、もうちょっとこう協力的にならないのか?」 「まあ、それなりには協力的な姿勢は見せていますよ」 「私は協力的です」  二人の異なる主張に、東海林はますますあきれる。 「とりあえず、このSR23というものが何かを考えないとな」  東海林の意見が最もだったようで、実咲も北柴もSR23という文字列に何か聞いたことがないか考えを巡らせる。 「班長、例の三件については警視庁の方で捜査してくれるそうです」 「そうか。西垣、このSR23について、何か心当たりはないか?」  東海林が西垣に実咲たちが解読した文章を見せる。 「これ、書いたのは生徒で間違いないですかね?」  何かに気が付いたかのように西垣は暗号文を指で指す。 「何故、そう言える?」 「いや、生徒たちの手帳にMRとかSRとか書いてあったのを見たことがあってですね」 「MRは医薬情報担当者のことじゃないんですか?」
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