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SR、とは?
生真面目そうな顔で北柴は西垣に訊く。
「いやいや、若い子は言葉の創造者だよ。簡単に言葉を生み出すセンスがあるね」
事務所のホワイトボードに西垣はMRとSRを書く。
「MRはMusic Roomの略。つまり、音楽室。そうするとSRは何か?」
「学校の中の部屋ですよね……あ、理科室ですか?」
「おそらく。この学校で理科室は一か所だけ。そうすると23は」
「二十三時の可能性が高いですね」
西垣のおかげで、簡単に残りの謎が解けた。
「肝心の『彼』は誰なんだ?」
東海林のその言葉に誰もが沈黙をしてしまった。
「犯行当日に待ち伏せたところで、必ず来るとは限らないですよね」
「そうだな。遠隔で何かが起こったら、待機している俺たちも危ないかもしれない」
今の世の中、何でも手に入る時代になっている。
高校生がアヘンを育てていた。
中学生が爆弾を作っていた。
そんな話は時折ニュースで流れてくる。興味本位なのか、金儲けなのかは本人のみぞ知るところであるが、そんなニュースが普通に流れていることが悲しい。一体どこで道を間違えたのか。実咲はいつもそんなことを考えてしまう。
「最悪の事態も考えに織り込まないとダメだな。俺と西垣は理科室内をくまなく捜索する。北柴と南雲は『彼』についてここ最近相談がなかったかを調べてくれ」
東海林の号令で、各々指示された捜査を始める。
実咲と北柴は真っ先にパソコンから生徒からの相談データベースを開けた。学内捜査部隊が創設されてから、十年余りであるが、設置されてからの相談内容は全てデータベース化されている。検索エンジンを立ち上げ、可能性がある相談をはじき出すことが出来る。
「いつ時点から探しますか?」
実咲はデータベースを立ち上げながら北柴に訊く。
「新学年になってからが良いだろう。もし何かしらの事件が起きるとすれば、前の学年末テストで何も起こらなかったから、それ以降の相談が該当するはずだ」
「新学年から、というのは?」
「学年末が終われば、学年が上がり、クラスも変わる。何か起きるとすれば、新学年が始まった時と考えるのが、自然だろう」
スラスラと自分の推理を言う北柴に感心してしまっている実咲は、言われた通りの内容で検索をかける。
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