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学内捜査部隊、です
「申し遅れた。自分も同じく警察庁学内捜査部隊第一方面第三機動隊所属 志心中学担当の北柴賢士だ」
「う、うるせぇ! おまわりでもないクセに!」
最後の悪あがきと言わんばかりに、特に大柄な男子生徒は実咲と北柴に言う。しかし、北芝のひと睨みで男子生徒たちは黙った。
「はいはい、事情聴取に行くよー。そこの君もね。お話、聞かせてください」
実咲は脅されていた小柄な男子生徒に優しく声を掛けた。小柄な男子生徒はきょとんとした顔のまま、頷いて実咲と北柴の後をついてきた。二人は四人をなるべく人目がつかないようにして、体育館の裏を通って第二校舎に入った。第二校舎の二階にある渡り廊下を通り、第一校舎の一階にある『学内警察部隊第一方面第三機動隊』の部屋に生徒たちを連行した。
誹謗中傷、脅迫、暴行、傷害……。
学校内で起きている事件がニュースに多く取り上げあれるようになってきた。その際に一緒に取り上げられるのは、児童・生徒の自殺数がこの数十年改善されていないことだ。世間からの風当たりが学校に強く当たった結果、教師は授業や部活動のほかに、いじめに関する指導・教育・調査も行わなければならず、それまで以上に多忙を極めていた。多忙ぶりと反比例するようにして教員志望者は減少した。それだけではなく教師を退職する人も増えてきた。
そんな状況を憂いた政府が、若年層の自殺防止や教師が授業に専念できるような環境を整えるために警察庁の中に独立部隊を創設した。
『学内捜査部隊』
学内における、いわゆる『いじめ』と総称される犯罪の未然防止や捜査・逮捕の権限を持つ部隊である。警察法や警察官職務執行法とは別に『学内捜査部隊執行法』が制定された。この法により、学校内において独立した捜査権限を持ち、いじめに関する捜査が出来るようになった。また、警察庁内に警察組織とは別の独立した組織が出来たことはニュースでも取り上げられた。一部の報道では、警察が人で不足であること、また業務が多忙であるため学校内の捜査まで手が回らないのも創設の一員であるとされていた。
警察組織と教育委員会と協力をし、学校内を安全な場にすることが実咲たちの職務である。
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