いたずら、SOS?

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いたずら、SOS?

 少し疲れた顔で戻ってきた東海林は実咲たちに声を掛けた。隣にいる西垣も珍しく疲れた表情をしている。 「こちらも今のところ該当するような記載はないです」  北柴も疲れた声で報告をする。実咲は目が疲れたのか、目薬を差している。 「手詰まりだな」  椅子に深く腰を掛けた東海林は天井を仰ぎ見た。 「生徒一人一人から聞き出すにしても時間がかかる。そもそもこれを事案として扱っていいのか判断が付けられないな」 「これは、間違いなくSOSです」  迷いなく言い切ったのは実咲だった。その言い方は自信があるように聞こえる。 「わざわざ暗号文にしたってことは、きっといたずらだと思われたくなかったからです」 「暗号にすれば、いたずらだと判断するかもしれないし、解読できない可能性もあったのに、なんで暗号に」 「そうかもしれないですけど、それが出来る唯一のSOSだったのかも知れないじゃないですか」  北柴の話を真っ向から否定し、実咲は自分の考えを正しいと信じたままだ。 「南雲の話を否定も出来ないし、肯定も出来ないな」 「班長、ここは南雲さんの勘にかけてみましょう」  同意したのは意外にも西垣だった。普段、西垣も北柴と同じく事実しか見ない。勘などというものを信じて居なさそうな西垣を実咲は驚いてみる。 「これまでの仕事の中で何か引っかかることがあったんじゃないですかね。それが今回の事案に繋がっている可能性がある、という彼女の勘にかけてみましょう」  いかに事実だけを見つめられるか。  それが学内捜査部隊の仕事の掟である。少しでも主観が入ってしまえば、感情が入ってきてしまい、正しい判断が出来なくなる。その為、仕事の中ではいかなる場合でも中立公平の立場を求められる。実咲以外のメンバーはこれをしっかりできているが、実咲はまだ十分ではない。感情に任せて判断してしまうこともしばしばある。 「手掛かりがない中で闇雲に動くのも時間の無駄だしな。南雲、お前が気になっていることを話してみろ」  全員から見られ、少したじろぐが、実咲はすぐに自分の頭で引っかかっていることを話し始めた。 「笹崎由香里ちゃんが気になります。彼女は西垣さんを訪ねてきましたが、私たちには詳細を話してくれませんでした。そのあとは早退、今日は欠席。話せない何かを抱えているんじゃないかと思います」 「彼女に直接話を聞きたいですね」
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