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今も昔も変わらない
「事情聴取、終わりです。困ったことがあったら、いつでも来てね」
実咲はいじめられていた小柄な男子生徒を笑顔で見送り、事務所に戻った。いじめをしていた大柄な男子生徒たちの事情聴取を終えた北柴は、彼らに厳重注意をして、既に家族に引き渡していた。
「こちらも終わりました、北柴さん」
事情聴取をまとめ終えた実咲は、北柴に報告書を印刷し、渡した。
「おつかれ」
北柴は実咲の作った報告書に目を通し始める。報告書を渡した実咲は、体を伸ばしながら自席に戻った。
「おつかれ、南雲さん」
机の向かいから西垣周に実咲は声を掛けられた。北柴よりも背が高く、細身の西垣は人の良さそうな顔でパソコンの前に座っていた。強面で不愛想の北柴とは違い、一緒にいてほっとすることが出来る。
「お疲れ様です、西垣さん」
「南雲、おつかれ」
北柴と同じくらいの身長で、第三機動隊志心中学校担当班のベテラン班長である東海林恭平が西垣と同じく、実咲に声を掛けた。一見すると教師のようにも見える東海林は教員だった過去を持っているため、実咲にとっては話しやすい上司でもある。
「班長、お疲れ様です」
「どうだった?」
「いやー、ドキドキしました。まさか本当に用具庫の裏でカツアゲしているとは思いませんでした。定番すぎて、逆にびっくりしちゃいましたよ」
事の発端はSNS上に書かれていた密告だった。
SNSが日常に定着して向こうずっと、人は簡単にSNSに何かを書くようになった。宣伝、テレビ番組の感想、ひとりごとなど、気軽に言える場が出来たのが幸か不幸か、いじめもSNS上で起こるようになってきた。そしてそれは現実にも反映されてきた。
今回は西垣が担当するSNSパトロールで見つけた事案だった。
今日午前十時用具庫裏でカツアゲがあるような話が、SNS上に書き込まれていた。発見後、すぐに実咲と北柴は用具庫周辺を調べに動いた。嘘か本当かわからないが、事実を確認することが実咲たちの仕事だ。
結果として、実咲たちはカツアゲ犯行現場を押さえることが出来た。しかし、誰が何の目的でカツアゲがあることを書き込んだのかまでは分かっていない。
「今も昔も変わらないところがあるんだな」
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