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何かできると良いな
実咲はすねたように言う。
不器用なのを自覚しているせいか、実咲は料理が苦手だ。焼く・煮るくらいはできるが、それも料理の基本という本に載っていそうなレベルの料理くらいしかできない。ましてや人様に披露できるレベルではない。基本レベルなのに時々焦がしてしまうのだ。
「班長は授業の質問を受けていたんですか?」
北柴は嬉しそうにお菓子を食べながら、東海林の机を覗いていた。
東海林の机には全学年の全科目の教科書がある。授業でわからないことがあった時やテスト直前は、昼休み時間に東海林による補講が事務所で行われる。担当科目の教師に訊きに行く生徒も多いが、教師が授業準備や席を外していると質問できないため、こっそりと東海林に質問しに来ている。教師たちも周知の事実のため、生徒や東海林を注意することなく、放置している。
「もうすぐ一学期末の試験も近いからな」
困ったように笑いながら、東海林は理科や数学の教科書を引き出しにしまう。今日が六月二十四日。来週月曜日からテストが始まることを考えると、テストまで今日を含めてあと三日しかない。生徒たちの中には余裕がない子もいるだろう。
「班長の教え方が上手いから、生徒たちも頼ってくれるんですよ」
「成績が少しでも上がってくれれば良いけど」
「私もみんなから何か頼られたいです」
小さくため息を吐きながら、机に頬杖をつく実咲。
「まぁ、今のところ無理だな。友達感覚で付き合うことくらいしか」
やや嫌味を含ませた声で北柴は実咲に言う。
「女子生徒からのお菓子を嬉しそうに受け取るだけの北柴さんには言われたくないです」
口を尖らせながら言う実咲は、校内パトロールの結果を書類に記載する。パトロールや相談、警備のほかに、さまざまな書類や報告書も作らなければならないため、誰もが常に仕事に追われている状態だ。
そんな中でも、生徒たちの小さなSOSに気づき、迅速に対応しなければならない。何気ない一つの見落としが重大事案に繋がることもあるからだ。
「俺たちはパトロールに出てくる」
「了解です」
東海林と西垣は準備を整えると、事務所を出て行った。実咲はバッグの中から、朝コンビニで買ったお弁当を取り出して、窓際にあるレンジで温めた。
コンコン
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