相談、ですか?

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相談、ですか?

 控えめなノックの音がした。 北柴が事務所の扉を開けると、そこにはショートヘアの小柄な女子生徒がいた。学校指定のセーラー服をキチンと着ており、真面目そうな印象を受ける。大人しそうな印象も相まって、クラスの中でもあんまり目立つタイプには見えない。 「どうした?」  目線を合わせるように北柴はかがむと、女子生徒は事務所の中をちらりと見る。 「西垣さんはいますか?」 「西垣さんは東海林班長と今パトロールに出ていないんだ。良かったら、自分が話を聞こうか?」  首を振ると女子生徒はその場を立ち去ってしまった。北柴は困ったように頬を人差し指で掻きながら、扉を閉める。 「何だったんだ?」 「今の子、一年C組の笹崎由香里(ささざきゆかり)ちゃんですよね」 「覚えていたのか?」  疑り深い目で北柴は実咲を見る。日頃うっかりしてしまうことが多い実咲の記憶力を疑っているのだろう。 「ちゃんと全生徒は覚えていますよ。五月に転校してきたんですよね。部活は文芸部に入っていたはずですよ」  実咲の回答に意外そうな顔をする北柴。 学内捜査部隊の隊員は全生徒の顔と名前、学年、クラスを把握しなければならない。しかし、部活動まで覚えている人は少ない。 「どうしたんだろうな。彼女がここに相談しに来たことはなかったはずだけど」  相談内容はどんな些細なことでも、担当している学校の班は独自の相談データベースに記載をしている。北柴はデータベースにアクセスし、確認するが笹崎からの相談は記載されていないのを確認する。 「授業中ですもんね。何か困ったことでもあったんでしょうか?」 「彼女のクラスに様子を見に行ってみるか」  北柴は実咲と共に、笹崎が在籍しているクラスに様子を見に行く。事務所のある第一校舎から渡り廊下を通って第二校舎の一階に向かう。昇降口の隣にあるのが、笹崎がいるクラスだ。体育の授業中なのか、生徒は誰もいなかった。 「えっとこの時間は」  実咲は本部から支給されているスマートフォンから、一年C組の授業内容を確認する。今の時間は校庭でバスケットボールをしていることになっている。  二人は昇降口を抜けて校庭に足を運び、笹崎の姿を探す。しかし、彼女の姿は校庭のどこにも見当たらなかった。 「さっき、制服だったな。保健室に行ってみるか」
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