02. 理由

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卒業生が集まったのは 大きめの部屋を借りきった宴会場。 卒業の解放感からか、 クラスメイトたちは羽目を外して 盛り上がっていたが 僕は比較的穏やかな心境で近くの席の友人と あれやこれや近況報告を交えて雑談していた。 ふと気になって純玲に視線を送ると 少し離れた場所で愛菜香や夏蓮たちと 楽しそうに話していたので 僕も気にすることなく友人と会話をしていた その時… 「わっ!」 後ろから両手で肩を叩かれた。 振り返ると いたずらっぽい笑顔の純玲がそこにいた。 「た、舘野さん?」 「まだ『舘野さん』なんてよそよそしい呼び方してんだ?」 そして純玲の隣にいたのは…愛菜香だった。 「げっ!や、や、山本さん…!」 「何よ、お化け見るような目で!」 「あ、いや、その節は…大変…ご迷惑を」 「何固くなってるんよ、それより…」 「何?」 きょろきょろと辺りを見回し 純玲がその場にいなくなったのを確認した 愛菜香が僕にひそひそと耳打ちする 「私の友達に手、出すなんてなかなかチャレンジャー…よね?」 「え?…舘野さん、、のこと?俺が?手を…出してる?」 「はぁ…だから…男子って、ほんとに、もぅ」 「ごめん」 「純玲…最近可愛くなったでしょ?」 「え?あ、そうだね」 「はぁ…」 愛菜香は小さくため息をつくなり また純玲の所に戻っていった。 そして再び二人でふざけながら話している、 愛菜香は一体、何を伝えたかったのだろう? 少し考えてみた。 何かとアプローチをしているのであれば それは僕ではなく純玲の方から、だろう? それとも僕が思わせ振りな態度を…? わからん・・・ 僕には女子の考えてることが さっぱりわからない。 だから愛菜香にもフラれてしまったのだろう。 愛菜香に言われた言葉を何度も反芻(はんすう)しながら 帰り道でひとり、あれこれ考えを巡らせた。 人通りの少なくなった商店街を抜けた時 「今井くんっ!」 あの日と同じ、背中越しに 聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
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