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振り返るとそこにいたのは純玲だった。
「あ、舘野さん、帰り道こっちだった?」
「違うけど今日はこっちから帰るんよ」
ん?・・・どういう事だ?
ここでも純玲が何かしらの
謎解きを仕掛けてきたのだろうか?
次の選択肢をどれにするかで
その"答え" は一目瞭然になるだろう
さて…どう返すか?
『そうなんだ…気を付けて』
『それじゃ、送ってくよ』
どっちだ?
咄嗟に僕が口にした一言は・・・
「あ、そうだ!舘野さん、この前の500円だけど…」
純玲は憮然とした表情でこう答えた。
「まだ返さないで」
「え?だって卒業したら…」
「いいから!私が『返して』って言った時でいいから」
「…そ、そう?」
「気になんてするなー♪」
純玲はようやく笑顔に戻って
いつものように歌い始めた。
「好きだね」
「今井くんこそ…誰推しなの?」
「それは言えん」
「私にはわかる」
「え?誰だよ?」
「言わなーい!わかってるけど」
こんな会話をするのも今日が最後なんだろうか?
そう思ったけど、この言葉は
今ここで口にしちゃいけない
何故か僕はそう思った、
これが答えへの過程…なのだとしたら
僕は少しずつ正解に近づいている。
そして次の選択肢へと・・・
「舘野さん、送っていこうか?」
「あれー?気が利くじゃなーい?」
純玲は何だか無理しておどけてるように思えた
時折点滅する街灯の下をくぐり抜けて
大通りに出た時
「今井くん…ありがと」
「え?俺、何かした?」
「何にも…でも高3が一番楽しかったなぁ」
「何かあっという間だったけどね」
「…バンドやるん?大学に入っても」
「うん、一応ね」
「私もがんばる、今井くんもがんばってね」
" 答え" は未だ解らず・・・
ひとつ思ったのは
もしかしたら、もしかしたら
お互いそれなりに好意を持っている…のでは?
だとしてもその言葉を口にする勇気はなかった。
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