02. 理由

6/7

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
振り返るとそこにいたのは純玲だった。 「あ、舘野さん、帰り道こっちだった?」 「違うけど今日はこっちから帰るんよ」 ん?・・・どういう事だ? ここでも純玲が何かしらの 謎解きをのだろうか? 次の選択肢をどれにするかで その"答え" は一目瞭然になるだろう さて…どう返すか? 『そうなんだ…気を付けて』 『それじゃ、送ってくよ』 どっちだ? 咄嗟に僕が口にした一言は・・・ 「あ、そうだ!舘野さん、この前の500円だけど…」 純玲は憮然とした表情でこう答えた。 「まだ返さないで」 「え?だって卒業したら…」 「いいから!私が『返して』って言った時でいいから」 「…そ、そう?」 「気になんてするなー♪」 純玲はようやく笑顔に戻って いつものように歌い始めた。 「好きだね」 「今井くんこそ…誰推しなの?」 「それは言えん」 「私にはわかる」 「え?誰だよ?」 「言わなーい!わかってるけど」 こんな会話をするのも今日が最後なんだろうか? そう思ったけど、この言葉は 今ここで口にしちゃいけない 何故か僕はそう思った、 これがへの過程…なのだとしたら 僕は少しずつ正解に近づいている。 そして次の選択肢へと・・・ 「舘野さん、送っていこうか?」 「あれー?気が利くじゃなーい?」 純玲は何だか無理しておどけてるように思えた 時折点滅する街灯の下をくぐり抜けて 大通りに出た時 「今井くん…ありがと」 「え?俺、何かした?」 「何にも…でも高3が一番楽しかったなぁ」 「何かあっという間だったけどね」 「…バンドやるん?大学に入っても」 「うん、一応ね」 「私もがんばる、今井くんもがんばってね」 " 答え" は未だ解らず・・・ ひとつ思ったのは もしかしたら、もしかしたら お互いそれなりに好意を持っている…のでは? だとしてもその言葉を口にする勇気はなかった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加