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口裂け女
「どんなにおぞましい考え方も、行動にはかなわないんだよ」
「お前がくだらないことを言うから、この少女は苦痛にまみれた一生を送る」
主犯の男は、履いているズボンのポケットから果物ナイフを取り出した。
果物ナイフを少女の目の前に突きつける。
吊り下げられた少女は「殺さないでください。殺さないでください」と泣く。
血と吐しゃ物にまみれた少女は、唯一傷つけられていない顔を殴打された。男の左手が二度三度と少女の顔を叩く。あくまでも主犯の男の手を守るためにつけていた手袋が何度となく少女の顔を打ち付けるたび、少しずつ赤黒く変色していく。
男の左手が8度ほど顔に打ち込まれる。男は荒い息を吐きながら、胸をおさえた。
「お前のあしながおじさんに言ってやれ。お前のせいで私の人生は無茶苦茶になったんだってな。指を折られ、切断され、腹に汚い入れ墨を入れられ、殴られて、今から両ほほをナイフで引き裂かれる。全部、あしながおじさんが悪いんだってな」
男は果物ナイフを少女の口元に突き入れた。殴打された口腔内はいくつもの歯が折れ曲がり、砕け散っていた。もう少女にかつての面影はない。顔面を破壊されたのだ。
「見てるか?おまえのせいだぞ」
ナイフが少女の口元から右ほほをゆっくりと引き裂いていく。果物ナイフではさほど良く切れないのだろう。ナイフはプチプチと皮膚を裂き、肉をえぐっていくのに時間を要するようだった。その作業は2分を要した。
少女は最大級の悲鳴を上げていた。口から泡になった血を吐き出しながら。目をカッと見開き、涙をボロボロとこぼしながら、抵抗できない体をガクガクと震わせていた。
「殺したりはしない。だがまともに生きていけるようなケガで返すわけにもいかない」
主犯の男はブツブツとつぶやいている。
「長谷川。お前だけは許さない」
憎悪というよりは明らかな呪い。悪意の塊のようなその行為は少女の口が耳元まで延長されるまで続いた。
男は疲弊からナイフを取り落とした。ナイフは血でべっとり汚れている。いくつか肉片もこびりついている。
少女は痛みと恐怖で失禁し、意識を失っていた。
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