お客様

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スマホに仕事依頼が来る。 一応紹介制で大きな広告は出していない。 葛城貢、「みつぎ」なんて名前だから、人に尽くすのはちょうどいい人生の符号かもしれない。 今夜の依頼者は清水優太、大学生でゲイの青年。 彼はなかなかパートナーが見つからないようで、葛城に話が来た。 貢は今年24歳、少し茶色い色の髪の、後ろは短く、長めの前髪で顔の半分を隠す。 片方の見える瞳は優しさを保つような色であったり、冷酷な殺人犯のような視線を向けたり、彼の本性はわかりにくいが、仕事をこなせばいいだけなので本人は気にしていない。 仕事を依頼してきた客にあわせて服を選び、表情を作る。 今回は男でセックス未経験の大学生。 ネコタチ、どちらでも出来るから、体を貸すだけでいい。 今夜はどうなのか。 あまり情報がないまま、依頼者の部屋の前まで来る。 着替えなどを入れた大きめの肩掛けカバンを持って、どうせ脱ぐからと黒いTシャツにジーンズという軽装でドアの前に立った。 慌てたようにドアを開けた今夜の客、清水優太は、緊張を隠せない顔で不安げに貢を見ていた。 貢より3つ下、細身で黒髪、真面目そうな青年に見えた。 こういう輩に限っていきなり豹変するので油断はできない。 「はじめまして。葛城貢です」 相手を安心させるために、貢は優しい笑顔を作って挨拶した。 「…ど、どうも。清水です」 時間制でこんな事に手間取っているのがもったいないので、固まっている清水優太を押し込むように中に入った。 「入っちゃった。上がっていい?」 無言でうなずく清水優太に、これは骨が折れるなと感じながら曖昧な微笑を浮かべつつ貢は奥に進んでいった。 「僕は別にデリヘルじゃないから。時間を売るだけだから好きに使っていいよ」 といっても彼はそういう欲求を満たしたくて貢を呼んだんだから、座っておしゃべり、なんてことは望んでいないだろう。 「優太さんはネコタチどっち?」 「…タチかも」 「了解。シャワー借りるね」 今夜は女役か、気持ちを切り替えて浴室に向かう。 大人なんだしゲイ動画くらい見てるだろうから、段取りはわかるだろう。 手取り足取りだったら時間内に終わらないかもな、そう思いながら貢はシャワーを浴びていた。
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