お客様

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もう一度シャワーを借りて、持ってきた服に着替える。 「これから朝ごはん作り」 手早く帰り支度をしている貢を見ながら優太は裸のままの上半身を起こしていた。 「お母さんは仕事で朝帰ってくるからこどもちゃん達のごはんを作りに行くの。週末だけね」 貢はそう言って合鍵を見せてくる。鍵を渡しておくなんてよっぽどの信頼がないと出来ない。 優太は起き上がって出ていこうとする貢のかばんを掴んだ。 「どうしたの?」 「あの…また連絡してもいいですか?」 一瞬時間が止まる。 「連絡待ってます。またね」 そう言って貢はやわらかく笑った。 間にお金がはさまっていても人間関係は形成される。 明るくなってきた外に出ると、夏の暑さがもう街を溶かし始めている。 途中24時間営業のスーパーで食材を買って、歩いて次の仕事場に向かった。 30歳シングルマザーの、双子の兄妹。 平日は会社で働いて金・土は夜アルバイトに行く典型的なパターンの家庭。 思えばかなり長いつきあいで、こどもが小さい頃は大変で、貢も手弁当状態で報酬はほとんどなかった。 今はふたりとも6歳に成長してそんなに手はかからない。 先行投資のおかげか、仕事は切れない。 でも嫌なヤツだったら貢はこの親子を切っただろう。 好きな仕事をして生きる、だからこんな仕事のやり方を貫いてきた。
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