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さっきからスマホの振動を感じている。
杏の相手をしながら起き出してきた弟の岳と、母親の美加の面倒を見る。
美加は無言で冷蔵庫を開けて、ポカリを一気に飲んだ。
母親の動き全てが不快なのか杏が眉をひそめる。
「…おはよ~」
その間に顔を洗った岳がテーブルについた。
「気分どう?吐く?」
「…一回吐いとく」
美加はふらふらとトイレに向かう。
「岳、いただきます言った?」
何も言わずに食べだした弟に杏が注意する。
全員起きだすとバタバタして、これが母親ひとりだったら怒号が飛び交うだろうなあと呑気に思っていた。
かばんに入れっぱなしのスマホが何回も振動する。
そろそろ出ないと面倒くさい事になるかなと思ったが折り返すのもかったるい。
どうせ誰からなのかわかっている。
貢に連絡してくるのは客しかいない。
弱火で煮込んでいた鍋に、カレールーを溶かしてかき混ぜた。
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