研修所は山の上

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虫だのネズミだのが、部屋に入って来たりしやしないだろうか。 閉めに行くのは面倒くさい。 開けておくわけにもいかない。 仕方なく体を起こそうとしたが、ピクリとも動かない。 動かしてはいけない雰囲気、というものがある。 よいち氏はそれを、肌で感じていた。 一方、全力ではね起きれば、呪縛が解ける気がしなくもない。 ーーもし、思惑どおりに金縛りの呪縛が解けない場合は?  ーー今よりさらに、ひどい状態に陥るかもしれない。 ドアは開きっぱなし、電気は付きっぱなしだ。 ――その方が、かえって安全ではないか。 無用心の方がいい、というのは、いささか乱暴な考え方だろう。 ――だが、両隣の部屋には同期の友人達がいる。 ――何かあったら、彼らの助けを呼ぼう。 よいち氏は、そんな心算(こころづもり)でいた。
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