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人影
人影は呼びかけに応え、ゆっくりと体の向きを変え始めた。
こちらを向きつつある横顔は、同期のAOではない。
背格好の似た、別の人物だ。
安堵感が、みるみる不安へ変わっていく。
よいち氏は口を開いて、問いを発しようとした。
声が出ない。
今やすっかりこちらを向いているのは、見も知らぬ人物だった。
背後の鏡には、何も映っていない。
こいつ――幽霊――! と、叫び声が脳裏に浮かぶ。
胸をどんと突かれた。
きっと心臓の鼓動が早く、激しくなったせいだ。
頭の中に、次々と危険な妄想が湧き出してくる。
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