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幽霊が去っても、よいち氏は起き上がれなかった。
理由は分からない。
まだ、起き上がってはいけない気がした。
とりあえず考え方を変えてみることにした。
――あれは、疲れた脳の創り出した幻だ
どれほど自分に言い聞かせても、恐怖がつのっていく。
――電気は消せない。
固く目を閉じて眠ろうとした。
――眠れない。
ついに耐えきれなくなって、無理矢理、金縛りを解こうと決意した。
まさにその時。
隣室から、汁物をすする音が聞こえてきた。
――食事をする音だ。
――生きた人間が近くにいる。
途端に死の呪縛は解け、ベッドから起き上がることができた。
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