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──猫又坂の夜はとても静かだ。
「初音さん……」
「ん……?」
七瀬が前、俺が後ろ。スプーンを重ねたような恰好でいつも俺たちは眠りにつく。
「……なんでもない」
「なんだよ。何かあるなら言えよ」
「初音さんってさ。将来ハゲそうだよね……」
「……お前はデブ中年になりそうだな」
「ハゲとデブかぁ。キッツ……」
クスクスと俺の腕の中で七瀬が笑う。
「でも俺はデブ中年の七瀬、けっこう楽しみだ」
「初音さんはハゲてもカッコいいよ……」
七瀬が本当に言いたかった事が何なのか、その時の俺は考えもしなかったが。
「おやすみなさい……」
それは翌日、意外なヤツからのメールがきっかけで知ることになった。
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