猫又坂🐱ミッドナイト

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「え……」  家の中は真っ暗で物音一つしない。 「まさか。……っ!」  腕時計に目を走らせると0時5分。   (嘘、だろ……)  部屋の明かりをつけると、リビングの隅に見慣れない塊がある。 「うおっ!?」  いつもなら自分の定位置で、七瀬が膝を抱えていた。死んだ目をして。 「居た……」  その時、テーブルに乗った七瀬のスマホからアラーム音が鳴り出した。 「は? え!?」  慌ててそれを取り上げると00:00。家の壁時計も12:00。俺の腕時計だけが00:05。 (俺の腕時計、進んでる!?) 「怖、かった……。このまま初音さん、帰ってこないかと」  震える唇で七瀬が呟く。 「お前……そんな怖いくらいならこんな事」 「男が一度言った事、取り消せるわけ無いだろ!」  変な所が意地っ張りでカッコつけ。俺の口から盛大なため息が吐き出された。 「ねえ間に合ったよ。いいの? どうして?」 「どうもこうもねぇだろ」  今にも泣きだしそうな顔を両手で挟んで、その瞳を覗き込む。 「俺はとっくにお前なんか追い越してるって事だ」
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