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※※※
流石に二次会までは参加できない。そこにまで俺がいたら太一も気を使うだろう。
「……ブラッディ・マリーですか」
ふらりと立ち寄ったバーで飲んでいると、背後からそんな声が掛かった。
「生き血飲んでるみたいですよ。似合い過ぎます」
「悪かったな、怖い顔で。……七瀬くん」
あははと軽やかに笑った美青年は、喫煙室で会った今日の花嫁の弟だった。
「偶然ですね。一杯だけ隣、いいですか」
「……ああ、どうぞ」
「ありがとう。あ、僕はギムレットください」
バーテンダーに声をかけて、彼がニコニコと隣のチェアに腰を下ろす。
「なんてね、嘘です」
「あ?」
「偶然じゃなくて。ホントはこの店に颯爽と入っていく初音さんの後ろ骨格がカッコ良くて、ふらふら着いてきちゃった」
「骨格かよ」
物怖じしない言動、人懐こい笑顔。
一杯だけという約束のギムレットを飲み干すと、名残惜しそうにグラスをなぞる。
「もう一杯どうだ。別に追い払ったりしない」
「え、でも一人で飲みたかったんじゃ」
確かにそのつもりだったが。
「いや、もういいんだ……」
嬉しそうに笑った七瀬はかなり酒に強かった。というより実は俺がけっこう弱い──。
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