猫又坂🐱ミッドナイト

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「──初音さん! タクシー降りましたよ、家はどこですか」 「文教区……猫又坂」 「はい?」 「……の前。このマンションの703……」  文教区千石に伸びる坂道、通称『猫又坂』。ここに俺の住まいはある。 「703ですね。ほら、しっかり歩いて」 「七瀬……俺、野菜ジュース好き。だからブラッディ・マリー……」 「聞きましたよ、お家にもスムージー常備してるんですよね」 「そうそう……」 「あっ、まだ寝ないで!」  そこでフッと視界が途切れた。 「──……初音さん、水飲みますか?」  薄く目を開けると、目の前に心配そうな七瀬の顔がある。気がつくと俺は自分の家のソファに座っていた。 「大丈夫……送ってくれて、ありがとな。おかげで」 「夜道で寝ゲロにまみれなくて済みましたね」 「はは……。いや、今日一日笑って終われそうだってコト。それにしてもお前、寝ゲロはねーわ……」  俺はネクタイを緩め、天井を仰いで長く息を吐く。  本当に、思いがけず穏やかな気持ちだ。 「……やめてください」 「ん……?」  睨むような目をして、七瀬がソファに片膝をつく。 
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