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「やっぱり。昨夜ベッドの中で僕を太一って呼んだから」
太一は完璧な奴だった。何でも出来て何でも知ってて、カリスマ性もある。
「それで昨日、二次会は行かなかったんですね。まだ好きなんですか」
「まさか」
俺は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して七瀬に放ってやった。自分は紙パックのグリーンスムージーにストローを挿す。
「名前呼んじゃうくらいなのに?」
俺は強いのは顔だけで、すぐ凹むし優柔不断。太一の顔色を窺いながら関係を続けているような状態だった。
だから別れる事になった時、寂しかった反面どこかホッとしたのを覚えてる。
「違うって。太一とはもう三年も前に終わってるし」
自分でも驚くほど静かな声でそう答えた。
「久しぶりにアイツを見たから夢に出たんだろ。それだけだ」
「見られて、勝手に夢の中であんなディープにコマされる太一くんって」
ブフォッ!と俺の口からスムージーが発射された。
「ギャップ萌えってあるんですね。顔コワイからどんなに乱暴かと思ったらめっちゃ優しいし、すっごいエロい顔して迫ってくる」
「やややめ……て……」
「あと声です。その低い声で太一って呼ばれた時、ちょっと嫉妬しちゃった」
「……」
俺は居たたまれなくなって、リビングの隅に座り込んだ。
「なんですかソレ。そんなデカいナリして隅っこで膝抱えるとか、じわるんですけど」
これは俺の独自のスタイル。考え事や何かを悩んでいる時はついこうしてしまう。
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