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「初音さんに太一って呼ばれた時。ちょっとどころかメチャクチャ嫉妬して、そこからは抑えがきかなくなりました」
「やめ……七瀬、ダメだ」
シャワーの雨が降り注ぐ中、しなやかな獣が俺を抱きしめる。
「悔しくて、初音さんを塗り替えたくて……。あぅ……ッ!」
「いいから、少し黙れ」
どこかで聞いた『細胞レベルで惹かれ合う二人のキスは本当に甘い味がする』なんて俗説が頭を掠めた。
「ま、待って初音さ……!」
「ああ……」
キスひとつが、理性と本能のスイッチを瞬時に切り替える。
「ちょ……待ってないじゃん。そんなにしたら僕……!」
「ああ……」
「……だからっ、昨夜の今じゃムリ。僕にだって限界があるの!」
「ああっ!?」
ギュウッと抓られて、俺のスイッチがスコンとOFFになった。
「もう! ゆうべ初音さん何回逝きました? 死んでも死んでもすぐ甦ってきて、ゾンビかと思いましたよ。にゃんこゾンビ!」
出しっぱなしのシャワーがもうもうと湯気を立てる中、七瀬が頬を膨らませる。
「ご、ごめん……。いや、そんなに!?」
「そうやって何度も巧みに煽るの天才ですか。せめて夜まで充電させてください。今は満足させてあげられる自信ない」
確かに七瀬の方が重労働……じゃなくて。今なにか引っかかるワードが。
「……夜までって?」
「だから今夜。え、まさか僕がこの家に住む事OKしてくれたの、ただのノリだったんですか?」
心底驚いたように七瀬が目を見開く。
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