真夏の夜に君を願う

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真夏の夜に君を願う

ーーージリジリジリ 太陽が容赦なく降り注ぐ八月。 今日もリコは扇風機をフル稼働させた横で、 団扇を仰ぎながら、畳に寝転んでいた。 着ているタンクトップに汗が滴る。 この時代にクーラーが付いていない家があるなんて… ガラッと音がして勝手に誰かが入ってきた。 恐らく、篤人(あつと)に違いない。 「おーーい、不良少女!とうもろこし取り行くぞ〜」 「…………。」面倒なことに巻き込まれたくない。 リコは寝たフリを決め込んだ。 「……起きてるくせに。行かねーのか?」 「行かない、焼けたくないし。」 「あっそ。  若いのにおばさんみたいなこと言いやがって。」 そう言って篤人は出て行った。 (いつもはもっとしつこいのに、今日はやけにアッサリしてるな。諦めてくれたのか?) 蝉の声が止まない。どこか懐かしい畳の匂いがする。 「…はぁ…原宿が恋しい………」 貴重な16歳の夏休み。 こんな夏を迎えるなんて、思ってもみなかったーー
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