真夏の夜に君を願う

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確かにリコは、人の目を引く容姿だった。 サラサラのストレートな黒髪に、母譲りのぱっちりとした目と整った顔立ち。そして父譲りの足が長い、ひょろっとした身体つきだ。 事実、父の家に来てからというもの、 "とんでもなく可愛い子がきた"と町中の噂となり、 用品店に少し外出するだけで、注目を浴びた。 だが、 " 東京には自分ほどの容姿の人間はたくさんいる" と思い、誰にもモデルになる夢を話せずにいた。 教育熱心な母には格別知られたくなかった。 そんな風に物思いにふけ、好きなモデルがのっているお気に入りの雑誌を開いたまま、リコは今日何度目かわからない眠りについた。 ー ーー ーーー トントンッ 「リコー?開けるぞ」 どうやら父が夕方の診療を終え、帰ってきたようだ。 父は神妙な顔をしながら、(ふすま)を開けた。 「あのな、、、さっきの話なんだけど」 「いいの!!別になれないってわかってるし、本気で目指 「すっごくいいと思う!!!!!!!!」 自分の夢を否定するリコを遮るように、父は大きな声で言った。 「へっ?」
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