Not Friends

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トークのジャンルは一般的なものが多いけど、自分でタグを設定することもできる。マニアックな話をしたいは有効だけど、相手が見つからないこともある。  今日は「カフェ バイト 大学生」。  トークテーマは「働くカフェのおすすめメニューと失敗メニュー」。  現れた顔を見て思わず、 「あ」と言ってしまった。  かろうじて動揺していないような声におさえられたとは思う。  こういう場面で相手に特別な興味を持っているように思われるだけでも最悪だ。 「ナオキくん?」  僕と同じように目を丸くしたのがミカ。  つい先日、「文系 製薬会社 就職」でトークした女の子だった。就職がらみの話だと2度3度と顔をあわせることは珍しくないけど、今日みたいに一般的な話題でもう一度会ったのは初めてだ。 「ナオキくんもカフェでバイトしてるんだ?」 「そう。大塚で。『大塚、おしゃれ、カフェ』ってタグつけても誰も参加してくれなかったけどね。ほら、一度登録すると合致するタグをつけた人がいたらトークの案内くるでしょ? だけど、それすら1回もない」 「あはは、1回もないってすごいよね。確かに大塚はおしゃれカフェないなぁ」  笑う彼女は飾り気がないけど画面越しにも伝わる魅力があって、この前の男の気持ちが少しだけわかった。 「で、みんなはどんなカフェでバイトしてるの?」  満遍なく聞いているつもりなのに、なぜかミカの話が耳に残った。 トークが終わった後に、「明治神宮前 カフェ ミカ」なんてGoogleしている自分がいてちょっと引いた。彼女のバイト先が屈指のカフェ激戦区でよかった。やめとけ自分、と心の中で戒める。  個人的に知り合うなんて僕のモットーに反してる。  どうせこれから就職して、いやでも付き合わなくてはならない人たちが増えるんだから、煩わしい人間関係を増やすのはどう考えても馬鹿げている。  
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