Not Friends

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「みんなさぁ、内定もらった時にどうやって、その会社に行こうって決めた?」  アヤノが身を乗り出して尋ねてきた。 「あぁ〜、難しいね」 「私はフィーリング」  ササキとリサがそれぞれこたえて、みんなの視線は多分、僕に集まった。 「ちょっと待って」  まずはコーヒを一口飲んで話すべきことをまとめる。 「僕の場合はさ、内定の連絡があった時に1次面接の面接官が電話くれたんだよ。おめでとうって言ってくれてさ。なんか、そんな風につながりが生まれるとは思ってなかったから驚いた。だけど、なんかいいなって思ってそこに決めた」  あぁ〜いいねぇ、と画面の向こうで3人が同じようにうなずく。 「わかる。面接に行った時の受付の感じとか、面接官の態度とかで空気感の違いっていうのはやっぱり感じるもんな。俺も結局はそういう空気で選んだわ」 「なるほど。そうだよね。条件とか見てもさ、微妙な給料の違いだけじゃ会社のことわかんないもんね。ありがとう! 参考になった。いやぁー、なんか私の学校の子ってまだ内定1個ももらってない子が多くてさ、聞くに聞けなくて困ってたんだよね」 「参考になってよかったよ。あ! そろそろ時間か」 「うん、じゃぁ、また」 「バイバーイ」  僕がそう言って画面に向かって手を振ったのを見計らって、母さんがひょこっと顔を突き出した。 「へぇ〜、これが噂のずーむ飲み?」 「Zoomじゃないし飲み会でもないけどね」 「いまどきよねぇ。好きな時に友達と話せるって悪くないわね。お母さんもやろうかな。今度教えてよ」 「いいけど。あ、そろそろ次のコールするから」 「はいはい。友達たくさんいて羨ましいこと。ずーむの邪魔しませんよ」  ずーむでもないし、Zoomでもない。  だけど、母さんが一番勘違いしているのは。  
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