少年の夢

1/3
前へ
/25ページ
次へ

少年の夢

「教会の子供は親に捨てられた子供だって兄ちゃんが言ってた!」 5歳の僕はその言葉の意味を知っていた。 「捨てられてないもん! 迎えに来るって言ってたもん!」 同い年のマナは1年前に教会へ来た。 当時の事は今でもはっきり覚えている。 沢山の涙を流しながら、シスターに抱っこされていた。 「ママ〜! ママ〜! 行かないで。マナも連れてってよ!」 「いい子にしてれば迎えに来るからね」 泣き叫ぶマナを見てお母さんは最後にそう言っていた。 マナは教会に来てから半年まで、夜になると親のことを思い出し泣いていた。 それを見るのがとても辛かったのを覚えている。 「いいよ、マナ。戻ろう?」 涙を流しながら僕の手を力強く握る。 僕はどこで生まれたのかも、お母さんの声も、お父さんの姿も覚えていない。 ユマという人が僕の事を預けに来たらしい。 手紙には名前と生年月日しか書いていなかった。 「マナ、心配しなくても大丈夫だよ。僕はずっと味方だから」 「うん!」 公園から教会へ戻ると、シスターと12歳ぐらいの子供達が夜ご飯の準備をしていた。 「マナ、ユウ、おかえりなさい」 「ただいま、シスター」 「ただいま……」 マナはさっきの事を気にしているのか、シスターの目を見て挨拶が出来なかったみたい。 夜ご飯を食べた後シスターに呼ばれ、今日の出来事を報告すると、「神様は皆さんのことを見ています」と言われた。 僕ら教会の子供たちは、親が居なくても神様が毎日見て下さっている。 だから大丈夫。そんな意味が込められていたのかもしれない
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加