8人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
と言っても読書など興味がないものだから何を探せばいいのか皆目分からない。ブラブラと図書館を歩き回っていると見知った顔を見つける。クラスメイトの良太が何か棚から本を取り出していた。
「よっ!」
俺が声をかけると良太は軽く飛び上がる。
「なんだ拓馬かよ。びっくりした」
「なぁなぁ何借りるの?読書感想文だろ?」
良太はこくんと頷き、手にした本を俺に見せる。タイトルは三国志。俺はつい首を傾げてしまう。
「良太、去年も一昨年も三国志じゃなかった?」
「いいだろ別に。好きなんだから」
「いいんだけどさ。三国志ってそんな面白いの?」
「当たり前だ!面白いから毎年、読書感想文にしてるんだよ!」
興味が湧いてしまう。
「俺も三国志にしようかな?良太のオススメ気になるし……」
「本当!?」
良太の目がキラキラと輝き出す。
「ならこれ拓馬が読めよ!実際、僕は家に何冊も三国志あるんだ!是非読んで感想聞かせて!」
「お、おう……」
これは読まない選択肢がないやつだ。良太は俺に三国志を押し付けて嬉しそうに帰っていった。俺も三国志を借りて帰宅して早速読み出す。
劉備、関羽、張飛の桃園の誓いから始まる物語。読み進めていくと良太の顔が頭に浮かぶ。良太を悲しませる訳にいかないと読み始めた三国志だったが、読書が楽しいと思った時間は生まれてはじめてかも知れない。
千八百年も前の世界。黄巾の乱。董卓の横暴。その世界を切り裂いたのは母さんの言葉だった。
「拓馬、お風呂は?」
あまりに熱中しすぎてその声に心臓が飛び出るほどに驚いた。
「入るよ!」
三国志に栞を挟み、その日は終了。先が気になるがそれは明日の楽しみ。明日が早く来るようにその日は早めに眠りについた。
最初のコメントを投稿しよう!