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感想を伝える約束をしたんだ。男の約束なんだ。散らすことはできない。
原稿用紙二枚。それが俺に許された枠。三国志の英雄たちは夢を叶えずにほとんどが散った。たった二枚にまとめるのは不可能。ならば書くのは……。
図書館で良太に押し付けられた三国志。それは友情の証。そんな出だしの俺の読書感想文を図書館読み終えた良太は深く息を吐いた。
「すごいよ拓馬!こんな風に三国志を書くなんて!僕を書くなんて!」
「はは。三国志読んでさ、本当良かったって思ったんだよ。三国志を読んでる良太をもっと知りたいって思ったんだよ。正直、良太はズルいよ。こんな面白いものをこっそり読んでるなんてさ」
「ふふ。拓馬に図書館が見つからなかったらまだ内緒だったんだけどね。そうそう拓馬のために持ってきたよ。吉川英治三国志!」
良太は手にした鞄から数冊文庫本を俺の前に置いた。
「やった!良太サイコー!そうそう、それから来週の夜宮さ、一緒に行かない?俺、三国志読むため、お誘い全部断ったからそこは外せないんだよ。良太も一緒に行こうぜ!!そして三国志布教しようぜ!」
「前向きだね。行くよ。三国志が築いてくれた友情だからさ」
良太は右手を俺に差し出す。
俺はそれをかっちりと握る。
「生まれた日は違えども」
「死ぬときは同年同月同日!」
お互いにニヤリと笑う。引きこもって本ばかり読んだ夏だけど、俺は一生忘れない。散らせない。それが三国志に対する礼儀だと信じている。
了
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