カザエル、奴隷を買う

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カザエル、奴隷を買う

「可哀想な物ですよ。 信じていた者から裏切られて全てを失って······、本来ならば奴隷として教育をしなければいけないんですが、王妃教育は受けておりますから問題は無い、と思われます」  俺達はバドルフから説明を受けながら奴隷を乗せた馬車に向かっていた。 「でも、実の家族に売られるなんて酷い」 「一部の貴族は娘や息子は『王族と繋がる為の道具』としか見てないんですよ。······内心腸は煮えくりかえりますがね、ちゃんと絶縁状を書いてもらって縁を切って貰っています。後で色々言わせない為にね」 「言ってくる奴がいるのか?」 「いますよ、奴隷の中には主人に見初められて結婚する人もいますから。勿論、関係は解除してね」  俺は貴族じゃないからな、果たして幸せに出来るかどうかはわからないが酷い目には合わせない自信はある。 「さぁ、着きました」  バドルフが馬車の鍵を開けて俺達は中に入った。  そこには虚ろな目をして俯いている少女がいた。  金髪の長い髪はボサボサで所々汚れている。  服もボロボロで身体には痣がついている。 「『ミーナ』さん、貴女の買いたい方が来られましたよ」  バドルフが優しく声をかけるとゆっくりと顔をあげていく。  流石は元公爵令嬢だ、整った顔立ちで品のある美少女だ。 「彼女がミーナ・ストライド元公爵令嬢です」 「······ミーナと申します」  ボソッと小声で呟いた。 「カザエルだ、······幾らで買えるんだ?」 「買うのっ!?」  俺の発言にレイシアが驚いた。  一目見た瞬間、すぐにでも保護しないといけないのではないか、と思ってしまった。 「彼女ぐらいになりますと金貨100枚以上が相場となります」  俺は財布を見た。  中にあるのは金貨10枚と銀貨銅貨が数枚入っている。 「······金貨10枚でどうだ?」 「いいですよ、ではサインを」  俺は契約書にサインをして金貨10枚を支払った。 「ミーナさん、この方がご主人様です」 「······よろしくお願いいたします」  ミーナはペコリと頭を下げた。     
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