冒険者カザエル

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冒険者カザエル

「こちら、本日の報酬となります」  受付嬢から報酬が入った袋を貰った。 「報酬はまた一部は貯金で?」 「あぁ、よろしく頼む」 「かしこまりました」 「いつもありがとうな」  受付嬢に礼を言って俺はギルドを出た。  その足で馴染みの酒場で夕食を取った。  頼むのは安いエールと骨付き肉だ。 「おぅ、カザエル。今日もいつもの飯か」  知り合いの冒険者が声をかけてきた。 「あぁ、定番の味だからな」 「お前も変わってるよな、毎日安い飯を食べて、金も貯まってるんじゃないか?」 「まぁな、俺には夢があるからな、その為にも金が必要なんだ」 「へぇ、もしかして女か?それとも武器か?」 「そんな所だな」  実際は違うんだが適当に返事をしておいた。  ここで夢なんて語ったら鼻で笑われるか馬鹿にされるかだ。  それぐらい俺の夢は冒険者の中では非常識な物だ。  酒場を出ていつもの安宿にやって来た。  チェックインして部屋に入りそのままベッドにドサッと寝転んだ。 「やっとだ、やっと買える······」  俺は袋の中からギルドカードを取り出しニヤニヤする。 「漸く俺の城、マイホームが手に入るぞっ!」  俺の夢、それは家を手に入れる事だ。  俺、カザエルはフラント王国内の小さな村で生まれ育った。  14歳の時に村を出て王都で冒険者として活動する事になったのだが、その時から夢を持っていた。  それが家を持つ事だった。  理由は簡単でのんびりスローライフがしたかったからだ。  冒険者稼業なんて長年やるもんじゃない。  俺は現在24歳、冒険者になって10年経過した。  流石に体力にも限界が来てるし現在Cランクの俺にはSランクに上がるなんて夢物語だ。  だから、冒険者を辞めてからの事も考えた。  で、家を買う事にしたのだ。  そして、今日目的が達成した。  この10年で貯めたお金は1000万G!  無駄遣いせず依頼をクリアして出来るだけ安い宿や食事をして徹底的にした結果だ。 「明日にでも不動産屋に行くか、どんな家があるんだろうなぁ」  俺はワクワクしながら眠りについた。  まさか、村を買うなんてこの時の俺はおもいもしなかった。
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