庭舟

10/17
前へ
/17ページ
次へ
               *** 二日目の夜に見たのは悪夢だった。 昨晩寝つかれなかったせいもあり、布団に入るや佐奈の意識は泥水のような眠りに沈んでいく。 この泥――周が掘った穴と同じ色だ。その証拠に、目の前にはダイヤの入った袋が落ちている。一歩先には銃弾のつまった缶が。 その缶の先には誰かが横たわっている。 驚いたように目を見開き、首から血を流して。 ――誰かの死体。 気配を感じて振り返ると、赤い血にまみれた包丁を持ってたたずんでいるのは、まぎれもない姉だった。 (綾姉、どうして) 馬鹿な周。余計なことを。 あの穴だけは絶対に……掘り返しちゃいけなかったのに。 佐奈はわななく身体を無理矢理抱きしめ、目をつぶる。 ダイヤモンドに銃弾。奇妙な二つの取り合わせ。 そうだったのか。 うちの庭にはその二つの持ち主の、死体が埋まっているんだ。6b54abd0-8b05-4b32-bc46-460ebacbb2d9
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加